亜鉛
亜鉛は、古代から青銅などの合金として知られていた金属で、炉から析出する時にノコギリの様なギザギザの形になるところから、「zinken(ノコギリの歯の意)」とよばれていました。16世紀の初めにスウェーデンの医師であるパラケルスス(Paracelsus)がこの金属をZinkと呼んでから、一般的名称になったといわれています。ラテン語では「zincum」、英語では「zinc」と言い、直訳すると「ギザギザの元素」という意味です。和名での亜鉛の「亜」は、「準ずる、次の」という意味をもち、新しい金属面の色が「鉛」に似て青みを帯びていることから、鉛に次ぐ金属と思われていたといわれています。
乾電池の極板から生殖能力の維持まで、公私ともにお世話になっている金属が亜鉛で、私達の体内には、約2g含まれます(体重60kgの人)。
○亜鉛の働き
私達の体は、60兆といわれる膨大な数の細胞からできており、その中には、絶えず分裂し、新しい細胞に生まれ変わっているものがあります。肝臓や消化管、毛髪、皮膚、赤血球等がこれにあたり、亜鉛はこのような新陳代謝を繰り返す細胞の中に多く含まれます。そして、新しく生まれた細胞が正しく活動できるよう必要な情報を伝える役割を担い、新陳代謝を助けているのです。また、骨の形成にも深い関わりがあるといわれています。骨格の形成に必要な栄養素としては、カルシウムがよく知られていますが、亜鉛はこのカルシウムが正常な働きをするのに欠かせないミネラルでもあります。細胞や骨が元気になれば、体中の各組織が元気になり、皮膚や髪の毛の新生も活発になるため、亜鉛は老化を防ぐともいわれています。その他、多くの酵素の中に含まれ、酵素の生合成や活性化、タンパク質の生合成に関与したり、また男性では、睾丸と前立腺に多く含まれ、精子や精液の産生に密接に関与していることも知られています。
○亜鉛の強精作用
精液にはビタミンEやフルクトース(果糖)、グルコース(ブドウ糖)、クエン酸、タンパク質、酵素などのほか、大量の亜鉛が含まれています。亜鉛が不足すると、男性は性欲が減退し、不妊症になったりします。
○亜鉛と前立腺
前立腺はクルミほどの大きさをしており、尿道の上部に位置し、加齢とともに肥大化して尿が出にくくなる等の症状が出てきます。この前立腺障害にはは亜鉛が関わっている可能性が大きいと考えられており、前立腺炎の患者の多くは前立腺内の亜鉛濃度が異常に低下しているという報告があります。また、200人の患者に亜鉛を投与したところ、70%の患者が改善という報告もあります。
○亜鉛と糖尿病
亜鉛がすい臓のβ細胞のインスリン分泌顆粒中に存在することが明らかにされました。その分泌顆粒はインスリン結晶を含み、インスリンの結晶化は亜鉛で促進されます。亜鉛欠乏で糖尿病が発生することから、亜鉛と糖尿病発症は重大な関係があるのではないかと考えられています。
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